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「明らかにおかしくなってるの、
自分でも判ってるのにね。
今まで普通にしてられたのに、
気付いたらどこまでも深く浸食されてるみたいで──
気付いたら戻れないところに来てるし、
全部捨ててもいいくらい欲しくなるし」
妙に饒舌な芹香は、あたしに語りかけているはずなのに、自分に言い聞かせているようだ。
芹香の瞳が、一瞬カップの中身を見つめる。
でもその瞳はすぐにまたあたしに戻ってきた。
「──そういうの、
判るから止めたのに。あたし」
「芹香」
「これから、もっと苦しくなるよ。でも、あたし知らない」
突き放すような言い方をしながらも、やっぱり芹香は穏やかな目であたしを見ていた。
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