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「嫌味、言いたいの?」
「とんでもない」
「幸せかって訊かれたら、幸せだったよ。でもその分苦しいよ……」
「真田には、菜月にしたようにする相手が、他にもいるってことだもんね」
「芹香!」
思考にまとわりついて──でも、考えないようにしていたその事実を突きつけられた。
心がギシリ、と軋む音がしたような気がしてしまったんだ。
口唇を噛みしめるあたしを、芹香は思いの外穏やかな目で見ている。
「ねえ菜月。人を好きになるって、怖いことだと思わない」
「……」
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