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「……芹香は、誰か好きな人でもいるの」
「知らなかった。あたし、結構恋愛体質なの」
言って、芹香はいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべる。
その瞳に、見たことのない潤いがジワリと満ちた。
おんなの、目だ。
「ハラの立つ男なんだけど。駄目ね、そういうのにばっかり引っかかる」
「……どんな人なの」
いつもフラットで、感情が乱れるところなんて人に見せない芹香。
そんな彼女がそんなふうに言う男の人って、どんな人なんだろう。
芹香は眉根を寄せ、一瞬考えた。
「──嫌味な男よ。人をやりこめることに命賭けてるんじゃないのっていうような」
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