八、君恋うまで

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 真緒と咲穂は顔を見合わせて、くすくすと笑い合う。  もう二度と会えないかもしれない。いや、きっと二度と会えないだろう。それでも友情を結ぶことに躊躇いを抱かなかった。  別れを惜しむように手を繋ぐ二人の姫君の傍らで、それまで黙って状況を見守っていた高良が晴麻に振り向いて言う。 「晴麻さんはどうなさるつもりですか? 晴麻さんも咲穂姫と同様の罪を犯しました。このまま都にいたら晴麻さんは極刑を免れられません。どうして晴麻さんともあろう方が吾田族の企みに加担したりしたのですか。話があった時に咲穂姫を諌めることもできたでしょうに」  次第に口調が咎めるものとなっていき、それに気付いた高良は自分で口を閉ざした。晴麻は薄く笑みを浮かべる。 「できただろうか。わたしの言葉などおそらく耳にも心にも届くまい。あの時、わたしが考えられたことはひとつだ。わたしが断れば、わたしよりも年若い巫覡が吾田族に取り込まれるということ。年長者としてそれだけは防がなければならなかった」 「晴麻さん、それじゃあ……」  高良は言葉を詰まらせた。後に続ける言葉を探して、イタチに似た大きな瞳を左右に揺らすと、晴麻はそのような言葉など必要ないとばかりに首を横に振る。
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