第38章 白鳥を追え

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第38章 白鳥を追え

 木内と金子は、蚊に食われながらも辛抱強く張り込みを続けた。  1時間以上経ってから、男が扉を開けて外に出てきた。  稲葉だった。彼は、辺りをキョロキョロと見回してから、携帯電話を取り出した。  木内と金子は、耳をそばだてた。 「もしもし、あいちゃん。俺だ。今夜、会えるかな?」 「えぇ、大丈夫よ」と携帯から漏れてきた声が微かに聞こえた。 「これから何時もの場所で落ち合おう」 「でも大丈夫?警察が来てたけど…」 「さっき帰ったよ。それに無能な刑事だ。どうせ、今頃、家に帰ってビールでも飲んで、酔っ払ってるさ」 「分かったわ。じゃ、何時もの場所で待ってるわ」 「したら、30分後に。」  稲葉は、電話を切ると、そそくさとホテルの中へ戻って行った。 「稲葉は、愛子と会うつもりっすかね?」  金子が小声で話した。 「あぁ、そうだろう。ついに動きやがった」 「警察もなめられたもんっすね」 「ふん、全くだ」 「犬養さんが、白鳥と言っていたのは稲葉のことだったんですね」 「全く、回りくどい事言いやがって、お陰で、体中、蚊に刺されちまったわい」  木内は蚊に食われた腕や首を掻いた。  木内らは、林道に停めてあった車まで、忍者のように小走りで戻り、稲葉の車が出て来るのを待った。 「稲葉と愛子は、何処で落ち合うんだろな?」  木内は呟いた。 「確か、稲葉は30分後にと言っていましたよね。と言う事は御代田のラブホテル街でしょうね」  金子が確信に満ちた目をした。
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