第39章 不倫の代償

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 稲葉は、取調室に入れられてからずっと黙秘を続けていた。  しかし、清子が罪を認めた事を突きつけられると、観念して罪を認めた。 「何故、清子の言う事を聞いて、直ぐ救急車を呼ばなかったんだ」  木内は、激しい口調で言った。 「今まで、築き上げてきた人生を失うのが恐かったんです…」  と半ベソをかきながら証言した。 「矢崎の遺体を、恋時雨の崖下にある小舟を使って、湯川に捨てたんだな?」 「そこまで知っていたんですか…そうです。夜闇にまぎれて、遺体を舟で運び、鼻顔稲荷の近くの橋下で捨てました」 「どうやってあそこに舟がある事を知ったんだ?」 「対岸にある温泉宿の2階から見えたんです。そして、温泉宿の女将が、恋時雨の一家が、店が休みの日には、家族総出で温泉に来ると話していたのを覚えていたんです。それで、恋時雨の舟を利用することを思いつきました」 「まさか、お前、温泉宿の女将とも…」  木内は唇を噛んだ。  稲葉は、表情を変えずに頷いた。 「くそっ。次は、ネックレスの件だ。あれは、お前が盗んだんだな」 「スタイリストをしている歩美に、盗んでもらいました」 「その歩美とも、男女の関係があるのか?」 「えぇ、彼女とも不倫をしています」 「不倫関係にあるとはいえ、簡単に犯罪行為に加担するとはな…お前も罪な男だな」 「歩美には、結婚を仄めかしました。もし協力してくれたら、離婚して君と一緒になると言ったんです」
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