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稲葉は、取調室に入れられてからずっと黙秘を続けていた。
しかし、清子が罪を認めた事を突きつけられると、観念して罪を認めた。
「何故、清子の言う事を聞いて、直ぐ救急車を呼ばなかったんだ」
木内は、激しい口調で言った。
「今まで、築き上げてきた人生を失うのが恐かったんです…」
と半ベソをかきながら証言した。
「矢崎の遺体を、恋時雨の崖下にある小舟を使って、湯川に捨てたんだな?」
「そこまで知っていたんですか…そうです。夜闇にまぎれて、遺体を舟で運び、鼻顔稲荷の近くの橋下で捨てました」
「どうやってあそこに舟がある事を知ったんだ?」
「対岸にある温泉宿の2階から見えたんです。そして、温泉宿の女将が、恋時雨の一家が、店が休みの日には、家族総出で温泉に来ると話していたのを覚えていたんです。それで、恋時雨の舟を利用することを思いつきました」
「まさか、お前、温泉宿の女将とも…」
木内は唇を噛んだ。
稲葉は、表情を変えずに頷いた。
「くそっ。次は、ネックレスの件だ。あれは、お前が盗んだんだな」
「スタイリストをしている歩美に、盗んでもらいました」
「その歩美とも、男女の関係があるのか?」
「えぇ、彼女とも不倫をしています」
「不倫関係にあるとはいえ、簡単に犯罪行為に加担するとはな…お前も罪な男だな」
「歩美には、結婚を仄めかしました。もし協力してくれたら、離婚して君と一緒になると言ったんです」
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