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稲葉の取調べが一段落した所で、金子は、婦警の依田麻紀の所へ向かった。
「やぁ、麻紀ちゃん。さっきお願いしておいた調査の結果は出たかい?」
「出たわよ。直ぐに持って行こうと思ったんだけど、取調べ中みたいだったから、終わるのを待ってたの」
「気を使ってくれて悪いね。それで結果は?」
「星川愛子の旧姓は、大塚で間違いなかったわ。でも彼女が10代の頃に、両親が離婚していたわ。母親の苗字は、大塚から旧姓の前田に戻っていて、母親の戸籍名は、前田隆子となっていたわ」
「前田だって。確か、矢崎の奥さんが、夕焼けの写真を送った宛名が前田だった…気がする」
「そうなのよ。宛名に書かれていた前田早紀という女性の身元を調べたら、何と前田隆子の母親だったわ。つまり、星川愛子の母方の祖母という事ね。金子くんの勘が当ったみたいね。やるじゃない」
麻紀は、チャーミングな唇の間から白い歯を覗かせて微笑んだ。
「やっぽり、あの写真に写っていたのは、愛子だったんだ。とすれば、男の方は、犬養という事になる」
金子は、そう呟いた。
あの夕焼けの写真が引き金になって、石墨の誘拐殺人事件が発生したと考えれば、愛子と犬養が事件に関わっている可能性が高い。
金子は、取調室に飛んで行き、木内に報告した。
木内は、軽井沢署に連絡し、愛子たちの身柄を確保するように要請し、すぐさま、佐久署を飛びだした。
そして、ボロのセドリックに赤色灯(パトランプ)を出して、煌々と回して、サイレンを出して、軽井沢ヴィラ・ヘメロカリスに急行した。
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