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開けた途端、ふわりと正面から風が流れ込む。
夏の名残の暑さをまだ感じる秋の初め、風が吹けば幾分涼しくて。
風に混じるのは煙草の香り。
目の前には、スーツの胸元、ネクタイの結び目がある。
ああ。
遅かった。
ゆっくりと、目線を上げる。
上から見下ろす彼の目も、急に飛び出した私に驚いたのかに切れ長の目を見開かせていた。
「……久しぶり」
そう言われても何も言葉を返せない。
目の前にある無駄に背の高い体躯に出口を塞がれてしまい、逃げ出すこともできずに、扉を開けた姿勢のままで固まってしまった。
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