764人が本棚に入れています
本棚に追加
「つ、束元君っ」
ごくりと喉を鳴らして、息を呑む。
「んー?何」
罪のない笑顔が一番訳が悪い。
「わ、私ね、テスト勉強、全然出来なかったんだけど……頑張るつもり、だからっ」
まだドキドキは治まる事を知らなくて、苦しさを残すけれど。
テスト勉強が手につかなかった事を彼のせいにはしたくないから。
「……だから?」
束元君が、不思議そうに首を傾げて答えた。
「だから、えっと、あの……」
……言わなきゃ。
私が私を“後悔”しないように……。
「だからっ……今日の数学のテストで束元君よりもいい成績がとれたら……」
顔が熱くて、喉の奥がヒリヒリして、身体中が火照ったように熱を帯びる。
「とれたら……?」
試すように私の顔を覗き込む束元君の仕草が、まるで起爆剤のように私の決心を呼び覚ました。
最初のコメントを投稿しよう!