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……え?
一瞬。ほんの一瞬、切ない表情を見せた束元君。
それを問い質す間もなく、彼はその顔を笑顔に変えて私の耳元に口唇を寄せた。
「大丈夫。本気出すって言ったでしょ?」
「で、でも、あのっ……」
頭の中はまだ上手く纏まらなくて、それでも勝手に口をついて言葉が飛び出していく。
そして、それを阻むかのように後ろから響いて来た足音。
「ーーーー遅刻、遅刻しちゃうっ」
「まだ余裕だろー……」
後方の廊下を駆けて来る足音に、慌てて束元君の腕から逃れるように身体を離した。
「……あれー、委員長達、まだいたのっ?」
曲がり角から姿を現したのは楠原さん。
そして、彼女に半ば無理矢理腕を引っ張られて来たらしい、楠原さんの彼氏兼束元君の親友、渡瀬君。
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