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「……いえ、あの、ねっ!」
何これ。
さっき昇降口で楠原さんに会った時の何倍も気まずい。
それって……私、だけ?
チラリと束元君の様子を窺うと、彼は何喰わぬ顔でいつもの調子で二人に声を掛ける。
「何なに?朝っぱらからイチャついちゃって。ひゅーひゅー」
束元君!何?ひゅーひゅーって死語じゃないの?
ほんの一瞬、しーんと凍り付いた空気。
「……うっせーよ束元、ばーか」
何故だかヒヤヒヤしながら見守る私なんて眼中にも入れず、渡瀬君はさらりと束元君の言葉をかわした。
「楠原さん、渡瀬に飽きたら俺んトコおいでよね~」
いつもの冗談っぽく、束元君がへらりと笑う。
それでも、小さく身体の何処かを刺していく言葉の響き。
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