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「ま、間に合ってますよー」
愛想笑いで答える楠原さんの隣で不機嫌な顔を覗かせる渡瀬君。
「……束元、しねっ」
ちくちく、ちくちく、小さな棘が体を刺していく。
……ああ。
“気まずい”の正体が解った気がする。
だって。
ここは私の居場所じゃない。
「あ、あの……私、先に教室入るねっ」
誰に向けての笑顔なのかも解らずに、無理矢理口角をあげて口を開いた。
束元君と楠原さんと渡瀬君の間に、私は入れない……
3人に背を向けて、ざわつく教室のドアを開こうとする。
だけど悴んだ指が震えて、上手く開いてはくれなくて。
「……ん、じゃあ俺も行く」
身体に刺さった棘が落ちる瞬間。
ドアノブを引く私の手に、驚くほどに温かい手が重なった。
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