モンスターの真実

32/39
前へ
/126ページ
次へ
「ま、間に合ってますよー」 愛想笑いで答える楠原さんの隣で不機嫌な顔を覗かせる渡瀬君。 「……束元、しねっ」 ちくちく、ちくちく、小さな棘が体を刺していく。 ……ああ。 “気まずい”の正体が解った気がする。 だって。 ここは私の居場所じゃない。 「あ、あの……私、先に教室入るねっ」 誰に向けての笑顔なのかも解らずに、無理矢理口角をあげて口を開いた。 束元君と楠原さんと渡瀬君の間に、私は入れない…… 3人に背を向けて、ざわつく教室のドアを開こうとする。 だけど悴んだ指が震えて、上手く開いてはくれなくて。 「……ん、じゃあ俺も行く」 身体に刺さった棘が落ちる瞬間。 ドアノブを引く私の手に、驚くほどに温かい手が重なった。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

764人が本棚に入れています
本棚に追加