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「……束、もと君……?」
思わず触れた手の主を見上げると、ふっと笑って目を細める束元君が見えて。
「三咲、行こっ」
寒い、寒いと呟いて、彼は私の返事も待たずに教室のドアを開いた。
「あ、あ、あのっ」
「ん?なぁに?」
ドアが開いてもなお、触れた指先は離れる事を知らない。
そのまま素知らぬ態度で私の手を引いて、彼は教室の中へと足を踏み入れた。
ざわつく教室がより一層騒ぎ立てる。
クラスメイトの視線の先にあるのは、重なり合ったままの私と束元君の手。
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