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「ほら、行こ?」
ざわめきを増した教室の中を、未だ私の手を繋いだままで、何喰わぬ顔で闊歩していく束元君。
抗う事も言葉を発する事も出来ずに彼の後を追って自分の席へと向かった。
チクチクと、“好奇心”と“嫉妬”が混ざったような視線を受け止めながら、それを避けるかのように束元君の背中に目を向ける。
笑っているのか、怒っているのか。
どうして今、私の手を握っているのか。
どうして、私を振り回してばかりなのか。
……解らない。
束元君の口にする言葉の、どれが嘘でどれが本当なのか。
どれが虚遇で、どれが真実なのか。
「……束元くんて、あほだね」
自分の席についてすぐ。
後ろの席のしのちゃんが発した言葉に、なんだか救われたように感じだ。
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