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「……結局何も進んでないでしょ?」
しのちゃんの眼力は凄い。
「……ふ、」
少し声を落とした彼女に答える代わりに、無理矢理笑顔を作ってみせた。
しのちゃん。
進んだよ、しのちゃんのおかげで。
二人で束元君家で試験勉強して。
キス、した。
『好きだよ』って言ってくれた。
だけど、気持ちは一方通行のまま。
私には告白さえさせてくれなくて、大きく高い予防線を貼られちゃった。
『嫌いにならないで』ってそう言って手を握られて、彼の手を振りほどけなくて。
結局、進展して募っていくのは私の気持ちばっかりで。
束元君は、そんな私を見て私を振り回すのが楽しいだけなのかも知れない。
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