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風が舞う。
束元君の柔らかそうな髪を、制服の裾を撫でていく。
いいな……。
何に対しての羨望かも解らないままに、ただ彼の後ろ姿を瞳に焼き付けていたその瞬間。
「……っ!」
髪を押さえた仕草で不意に振り向いた彼。
確かにこの教室を見上げたのに気付いて、慌ててカーテンの後ろに身を隠した。
バレた?
見てたの、気付かれた?
それとも……偶然?
『気付いて』なんて高望みしたから、バチが当たったのかな。
それとも、私が望んだ願いが叶ったのかな。
後ろ手にカーテンを握る指先に力がこもる。
怖くて、これ以上窓の外を見る勇気はなかった。
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