764人が本棚に入れています
本棚に追加
『三咲って可愛いよね』
彼の台詞が頭の中でぐるぐる回る。
鼓動は治まる事を知らずに騒ぎ立ててる。
右手の平で存在感を増していく、透明の包み紙の中で熱を待ちわびる、薄い水色の小さなキャンディ。
「綺麗な色……」
吸い寄せられるようにそのキャンディを口にすると、今まで味わった事もない不思議な味。
これ、何の味だったっけ?
よく考える暇もなくそれは甘い余韻を残して、熱い口の中で溶けて、消えた。
……それからすぐ、私は嫌でも知る事になる。
「束元く~ん、あたしもキャンディ頂戴っ」
「いいよ~、どれがいい?」
「やーん、どれにしよっかなぁ」
「松田さん可愛いから。二個あげちゃう!」
彼の名前は“束元 悠希哉(ツカモト ユキヤ)”
同じクラスの、やんちゃで目立つ男の子。
女の子なら誰にでも優しい、そして軽い。
所謂ただの、チャラい人……
.
最初のコメントを投稿しよう!