モンスターの降臨

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「やっと終わったー!ありがとう三咲っ」 「いいよ、別に。どう致しまして」 「じゃあこれ、はい」 そう言って、いつもと同じ仕草でポケットから手を出す束元君。 休み時間の教室。 私の前の座席に座る彼がニッと悪戯に笑って、握った右手を差し出した。 もうすぐ、春が来る。 春休みが終わったら、私達は二年生に進級する。 思えば初めて話したあの日から、あっという間の一年だった。 あと少し。 こうやって当たり前みたいに彼が私にキャンディをくれるのは、あと少し。 「あ、ありがとう」 宿題を写させてあげる代わりに、いつも彼は“あわだま”をくれる。 小さな包みの綺麗な色のあのキャンディではなくて、大きくてしゅわしゅわの泡がたくさん出てくるやつ。 「これ、大き過ぎて食べにくいのよね」 思わずぽつりと呟くと、束元君は一瞬口を尖らせて、だけどヘラリと笑って見せた。
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