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本当は、私と楠原さんの会話を聞かれていたんじゃないか、とか。
わざと私をからかうように挑発するような事を言ってるんじゃないか、とか。
毒の回った頭の中がぐちゃぐちゃで、何をどう答えたらいいのかすら判らない。
「えーっと、あの、ね」
肩に置かれた彼の手がやけに熱い。
わざとらしく漏らされた溜め息が、熱っぽく頬をかすめるから、否応なしに顔がほてっていく。
それはきっと楠原さんだって同じ状況のはずなのに。
どうして私ばっかり、こんなにドキドキするんだろう。
「私は……「……はいっ」
考えるよりも先に口をついて飛び出した声に被せるように発せられた声。
私の方だけを見て、ニッコリ微笑んだ束元君の笑顔。
「……三咲、これあげるから」
手のひらに、ポンッと乗せられたのはいつもの大きなキャンディ。
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