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瞬間。私の肩に乗せられた手に、ギュッと力が込められた。
「……俺の事、嫌いになんないで……」
私だけに聞こえるように耳元で吐き出された言葉。
「つ、束も……「じゃあねっ」
答える事を許さずに、彼はそのまま私と楠原さんの肩を押し分けて一歩前に出た。
甘い匂いの風が過る。
「あー、ずるいっ!束元君、あたしにもキャンディちょうだいっ!」
楠原さんの声がまだじんじんする耳元を掠めていく。
「……だーめ。楠原さんにはあげない」
前を行く束元君が振り返る事なく、彼女に答える。
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