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「だって、三咲は……俺の特別だからね」
「……っ」
束元君。
今どんな顔してるの?
彼は前を向いたまま、私に背中を向けたまま。
そのままおどけるように、長い廊下を走って行く後ろ姿だけが瞳に焼き付く。
「……えぇ、え、えーっ?」
隣で楠原さんが興奮気味に驚きの声をあげる。
「い、委員長っ!聞いた?今の聞いたっ?!」
首を絞めるくらいの勢いで彼女は私の肩を揺すって、頬を赤らめた。
「……う、うん」
「もしかして~委員長、放心状態?」
楽しげな声は右から左に流れていってしまう。
……束元君、ずるいよ。
テスト前のこのタイミングで、また私を惑わすなんて。
本当に、ずるい。
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