いきもの

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小さな明るい部屋にいた。 丸みを帯びた様々な淡い色の家具で囲まれていて、一見、子ども部屋のように見える。 開かれた窓から光が差し、カーテンがヒラヒラと揺れている。 窓際に近寄ると、ここが上階であることがわかった。 柔らかな太陽の光が、エメラルドグリーンの海を照らしていた。 穏やかな波が時折キラキラと輝き、微粒の宝石が混ざっているかのようだ。 左右には同じような総タイル張りの建物が一棟ずつ並んでいる。 人影は見当たらない。  ねえ。 呼ばれた気がして、再び海面を見ると、つるんとした丸い頭の生き物がこちらを見上げていた。 半分しか見えてはいないが、大きな青白い体にリーフ型の愛らしい胸びれ、背びれはないその姿はシロイルカのようで、澄んだ瞳と緩やかにカーブを描いた口角、表情は微笑んでいるように見える。  それはなに? そう聞かれ、手に持っていた指揮棒を見ながら先程の光景を思い出していると、シロイルカは言った。  とってきてあげるよ。 何を?と聞く前に、シロイルカは海の中へ消えた。 指揮棒をポケットに入れて、暫く誰もいない海をぼうっと眺めていると、遠くの方から歌声が聞こえてきた。 目を凝らしてその方を見ると、青白い頭が八つ、向かい合うようにぷかぷかと浮かんでいた。 耳を澄まして聴いてみると、可愛らしい音色が遊んでいる。    ねえ、とってきたよ。 シロイルカが戻ってきた。 相変わらず微笑みを浮かべ、見上げていた。 すると、少し開いたシロイルカの口からドーナツ型の泡が現れた。 キラキラと光る天使のリングのような泡は、ふわふわと浮かんでゆっくりと目の前に到達し、両手を差し出すと、掌の上で泡が弾けたと同時に米粒くらいの黒い音符が山のように積もっていた。
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