いきもの

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いきもの

だだっ広い道路を歩いていた。 車が通り過ぎることもなく、シンとした空間。 ここはどこなのか、ふと視線を横に向けると、道路に沿うように樹が連なってい て、その隙間から晴れ晴れとした空の下、綺麗な青が一面に広がっていた。 吸い込まれそうなその色をじっと見つめ、瞬きをする。 目の前に真っ黒な見台が現れた。 書物などは無い、代わりに木製の棒がちょこんと置いてある。 手に取り、まじまじと見つめる。 持ち手の部分がコルクであしらわれたそれは、どうやら指揮棒のようだ。 魔法使いになった気分でスっと縦に振ってみたが、何も起こらない。 そこで気がついた。 音がしない。 目の前には確かに海が広がっているが、風や水のざわめきが聞こえない。 美しい海派が形を変えることはなく、ただ模様として佇んでいた。 まるで絵画のように。
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