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岡野の部屋では、今まで着ていた服が適当に畳まれ、床に雑に投げ置かれたようだった。
ベッドの中で壁側を向いて横たわり、左腕を掛け布団に乗せている。
まだ熱が高いのか、吐く息は荒い。
後ろ姿だけでは眠っているかは、分からない。壁と岡野の顔の間へと覗き込んで、見て確認せねば。
そんな恐ろしいことをする気は、毛頭ないけど。
でも、でも、少しだけ。
冷却グッズを頭に使いたい。勝手に頭を持ち上げるよりも、了解を得て、できれば自分で頭を持ち上げてほしい。そして枕を入れ替えるという間近での作業の時は、どうか睨まないでもらえないだろうか。
少しだけ、岡野の左耳に息がかからないように、そーっと...
「ギシッ」
「.....ッ!!」
ベッドを軋ませてしまい、すぐに戻る。
私は何もしてませんよ、と、岡野から視線を外し、明後日の方向を見てみる。
そんな私を誰も見ていない。岡野も私を振り返り見てはいない。
.....やはり、眠っている、ように、見えた、苦しそうに。
おそらく瞳が閉じられている。
いや、少し開いているのかな。
壁へと、顔が真っ直ぐ横を向いているのではなく、少し枕側へと俯いていて、その見辛さが憎い。
イビキでも聞こえれば、容赦無く頭をいきなり冷やすのだけれど。
眠りがもう少し深くなるまで待とうと、床に腰を据えた。
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