未来I-ii

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しばらく岡野の背中を布団越しに見つめれば、呼吸と共に布団が上下する。 生きてる...。 当たり前だけど。 この人と籍を入れた夫婦ということが、とても不思議に思えた。 岡野の呼吸にわざわざ〝生〟を感じ、彼も人なんだなぁ、なんて思ってしまうところは夫婦としては不自然なことなのだろう。 確かにこんなにじっくり岡野と一緒にいることなんてなかったから、今日は岡野に思考が奪われる時間が多い。それはルーティン的思考ではないから、実は戸惑っているのかもしれない。 「カサッ...」 岡野の左腕が動いて、掌が耳に触れた。 指先で耳を少し摩って、そのまま掌は耳の上。 起きているのか寝ているのか。高熱だからそんな感覚も彼自身、鈍くなっているのかもしれない。通常、私が居るのがわかっているのなら、鋭い視線を投げかけるはずだから。 でも、眠りの浅い不幸な岡野が弱っているのは、不謹慎だと思うが面白いし、いつもの恐さも少しだけ感じない。 ペットにチーターを飼うときの感覚に似ているのではないか?飼ったことはないけど。 寝ている岡野に、そっと近づく。 さっきよりも呼吸音が大きい。眠りが深いから大丈夫と、そっと髪に触れようと手を伸ばした。 静かに、静かに、そっと。 指先が髪に触れる。触れられているとは感じない、ほとんど触れてないような触れ方で。 もう少し、触れて撫でてみよう。 髪の多くを感じる。指と指の間にも。 そこでハッとして、手を引っ込めた。 視界に不思議なものが飛び込んできたから。
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