未来I-ii

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今のこのような顎の丸みは、私の手料理の所為で、とはとても言えない。普段、何を食べていらっしゃるのか全くわからないけど、多分、普段の食事の栄養が行き届いているのだろう。 顎がまだシャープだった頃は、一緒に外食したり、結婚してから数ヶ月は私の手料理も笑顔で食べていてくれたのだけど。 岡野はこんな顎ではなかった。 性格も、岡野から話しかけてくれて、とても気さくで冗談も面白くて.....こんな風ではなかった。 当時の岡野とのやり取りを思い出したが、そんな別人との思い出、今では何の役にも立たないと岡野の少し白髪が混じり始めた後頭部を見つめた。 時刻は11時を回っていた。 急いで何か食べるものを作る。食欲があるかはわからない。食べたくないものはそのまま置いておくのが岡野、とわかっているので、お粥とたまご粥、サッパリしたリンゴを剥いておいた。あんパンとコーヒーも忘れずに。 すごい組み合わせだが、文句はないだろう。やれることはやった、似非妻として。 薬は食後なので、そのままお粥が並んだトレーの上に置く。 次は、洗濯。 部屋の隅に置かれたスーツケースに手を伸ばした。 お粥を置いたこの部屋で異臭をぶちまけるのは気が引けると、静かにキャスターを転がした。 コロコロとリビングまで移動する。 窓を開けた窓際で、覚悟を決めてロックを外したが.....。 あぁ、いつもの異臭が、しなかった。
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