同伴デート

4/9
前へ
/11ページ
次へ
住んでいた職場近くのマンションを引き払い、妹が待つ地元の家へと帰る。 ろくに挨拶もせず店を辞め、申し訳ない気持ちはあった。 しかし小学生の妹を1人きりにしておく訳にはいかなくて・・・。 ――― 「ただいま、芹佳。 今日からお姉ちゃんが一緒にいるから。 もう・・・、泣かないで・・・。」 「お姉ちゃん、ありがとう・・・。」 ――― 両親の葬儀は、近くにいる親戚が全て賄ってくれた。 地元に帰った私は、すぐに新たな職を探す。 しかしそれも、思い通りにいくはずがなくて・・・。 私の資格と学歴で働ける職場は限られていて、それはどれも賃金が安すぎる。 妹と私、2人分の生活費を稼ぐためには、それなりの収入が必要だった。 だからといって、こんな田舎には今まで働いていたような『サービス業』の店はない。 ふらふらと地元の小さな繁華街を歩きながら、溜め息を吐く。 しかし、その時目に飛び込んできたのは・・・。 ――― 『スタッフ募集!!』 『20歳以上、経験不問!!』 『レギュラー歓迎!!』 ――― 地元の繁華街にあった、小さなスナック。 風俗の仕事に比べれば賃金は安いけど、レギュラーとして働ければ申し分のない報酬が貰える。 夜間は不在がちになるから、芹佳に寂しく可哀想な思いをさせるかもしれない。 だけど、生きていくためには仕方ないもの・・・。 そう割り切って、ここで働いてみよう。 そして私は、求人広告の掲げられたそのスナックの扉を叩いたのだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加