同伴デート

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さりげなく繋いだこの手に、ずっと触れていたい。 そう思っているのは、きっと私だけだ。 水商売を始めて、生活のために必死に働く毎日。 友達とも疎遠になり、恋愛に縁遠くなってしまったと思っていたのに・・・。 彼と出会えて、私は再び『恋』を覚えた。 今まで付き合ってきた男性とは全然違うタイプ。 真面目で奥手。 だけど、とても賢くてオシャレで・・・。 私には相応しくない、手の届かない存在だってわかってる。 だけど今日だけは、『同伴』に見せかけて『デート』を楽しみたかった。 半歩先を歩く私の足は、駅前に向かってどんどん進んでいく。 チャコールグレーの空からは、ふわふわと雪が舞い降りてくる。 そしてその白いドットは、繁華街のネオンや街灯の光によって七色のプリズムを描き、キラキラと星屑のように降り注いだ。 数年に1回程度しか降らない雪が、今日私たちの上に降り注いでいる。 これも、『ラッキースター』の影響なのか。 もしそうならば、1つくらい私にも『ラッキー』をちょうだい。 明日には、もう『アンラッキー』な終末しかないのだから・・・。 視界に少しずつ、繁華街のネオンとは違った煌びやかな光が見えてくる。 駅前のイルミネーション会場には、既に多くの人々が集まっていた。 毎年クリスマス時期に催されるイルミネーションの演出。 今年は『最期』を迎える年。 例年よりもその規模が大きいと、ママ贔屓の店の客が教えてくれたっけ・・・。 イルミネーション会場に差し掛かろうとしたその時、繋いでいたはずの右手から温もりが消えた。 「・・・織田さん?」 繋いだその手は、彼の意志で離されていた。 そして立ち止まり、多くの電飾でできたイルミネーションツリーを見上げる。 「円佳・・・、あのさ・・・。」 立ち止まったまま俯き、織田さんはいつもと違った様子を見せる。 いつもなら、こういう時でもぽかんとしたまま私に付いてきてくれるのに・・・。 「何・・・?どうしたの・・・?」 離されてしまった手が寒い。 そして、彼の様子が気になって・・・。
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