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膨れっ面を横目に見つつ少し考えるが、夢のレパートリーなんぞ知らないので諦めることにする。しかし、何もリクエストしないのではまたぶーたれそうなので一言付け加えて。
「特にねぇな。俺はお前が作った料理なら何でもいい」
「なっ……祐樹はそういうとこ本当にズルい」
白い肌を耳まで真っ赤にして、立ち止まり、ボソボソと呟く夢をあっけらかんと前を行く。
さっきのお返しだ。
「じゃあ祐樹の好きなシチューにするね。煮込むのにちょっと時間かかるけどいいよね?」
夢が俺の好きなものを覚えていたことに感心していると横へと戻ってきた。こいつのこういう所は本当にマメだ。
「あんま頑張りすぎたもん作らなくていいからな」
作ってもらうのに、あんまり手のかかるもので煩わせるのも悪いと思っての一言だったが、夢は隣でドヤ顔を披露している。
「祐樹は知らないかもしれないけど私シチューは得意なんだから! あ、あとデザートはもう準備してあるから、楽しみにしててね」
嬉しそうに、そんな他愛ない会話を続けていると商店街先の交差点に着く。
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