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リノリウムの床を足早にキュキュと鳴らしながらこちらに近づいてくる音が聞こえる。
まだ面会時間は過ぎていない病棟は他の足音もあったが、その音だけはなぜかハッキリ聞こえた。
「祐樹君! 娘は? 夢は無事なの?!」
「おじさん、おばさん……すみません。俺が着いていながら」
「祐樹君せいじゃない。気にしないでくれ。直ぐに知らせてもらえて感謝しているぐらいだよ」
深々と下げた頭をおじさんの大きな手が撫でる。
「夢の方は処置が終わっていないのでなんとも……」
頭を上げて顔面蒼白のおばさんにそう説明するのと手術中のランプが消えるのは同時だった。
程なくして出てきた医師におばさんが詰め寄る。
「先生! 娘は、娘は無事なんですか!?」
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