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「そうか、それは悪い事をしてしまったな。せっかくの夫婦旅行に」
「いいんですよ。どうせ年中イチャイチャしてるんですから」
消灯時間も過ぎて、静まり返るくらい無音の病室に俺とおじさんの会話がポツリポツリと浮かび上がる。
「確かに。それはそうかもしれないね」
無理をして笑ったような会話を最後に会話が止まる。
どれくらいの沈黙だったか、一瞬だったか、一時間だったか。沈黙を破ったのはおじさんの方だった。
おもむろにポケットを探ると箱を取り出す。
「夢から、祐樹君宛だそうだ。妻が祐樹君に渡してやってくれと頼まれた」
黒い箱は10センチほどのもので、蓋と上下に分かれるタイプのもののようだった。
「夢さんからですか」
受け取ってしばらく眺めていたが今は開けないことにした。
おじさんもそれ以降何も言うことは無かった。
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