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確かにイベントごとに手を出し、少しでも売り上げを上げたいという商魂は見上げるものがあるが、
『バレンタインデーに乾物を贈ろう!』とか『和菓子であなたの気持ちを伝えよう!』というのぼりを見ると悪意しか感じないのだが。
という、どうでもいい他者嫌悪と現状否定をしていると後ろから声をかけられる。
「祐樹! 酷いよー先行っちゃうなんてー」
声の主には検討がつくので、振り返らずに返事だけ返す。
「一緒に行く約束なんてしてないだろ?」
「そうだけどさー。小さい頃はいっつも商店街手前の交差点で待ち合わせだったじゃーん」
そう言って頬を膨らませるのを目の端で捉えるが気にしないことにする。どうせこいつの機嫌はすぐに治る。
「あ、おばあちゃーん!」
隣にいた声の主は落ち着きなく、少し先の畳屋で茶をすすっていた店主に声をかけに行く。
その姿を横目に見ながら。俺は歩みを緩めない。
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