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「祐樹! お煎餅もらった!」
すぐに戻ってきた声の主は嬉しそうに笑顔で、ショートカットの髪を弾ませて戻ってきた。
ここに来るまでに少し走ったからか、マフラーから出た色白の顔はほんのり赤みがさしている。
結城夢。幼馴染の少女は一枚の煎餅を差し出し、自分でも一枚頬張っている。
俺は夢の向こうにいる畳屋のお婆さんに会釈をすると、ありがたく頂くことにした。
「んー! 美味しい! そうだ! チョコ煎餅ってどうかな? お煎餅にチョコがかかってるの! 売れそうじゃない!?」
「もうあるだろ、それ」
意味のわからないところでこのイベントに乗って行こうとする夢の商魂を尻目に、学校への道を歩いていると、企画戦略の思考から浮上したのか夢が声をかけてくる。
「祐樹は今年も叔母さんからの一個かな?」
「今年は0かもしんねぇなぁ」
「え!? なんで?」
「来年から大学生なんだからいいだろって、今朝言われた、絶対面倒になっただけだろうけど」
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