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「それを君に話すために呼んだのだよ。」
ヒトラーが応えた
シンに対するヒトラーの信頼は厚い
その証拠をこの部屋にいる人数が物語っている
シンとしても、ヒトラーの信頼を裏切りたくない
「一体、俺に何をしろと……言うのですか?」
シンの敬語は下手くそだ
だが一向に上達することはない
普段敬語を使うことなど無いに等しいからだ
一応努力はしている
ヒトラーも黙認している
それほどに互いを信頼しているのだ
「……まずはこれを見て貰いたい。」
ヒトラーは、少女のプラチナブロンドの髪を鷲掴みした
そして上を向かせ、その顔を思い切り打った
バシン……
鈍い響きが部屋に残る
シンは冷めた目で冷静に事を見送っている
そんなシンの目に驚く光景が映った
「コイツ………!?」
髪を引っ張られ、顔を上げさせられた少女の瞳から光が溢れ落ちる
窓から差し込む光を反射し輝きを増す
床に落ちたそれは、普通ではあり得ない音を立てた
ピキンッ………
涙である筈なのに
―――固体?
シンは床に転がった透明な小さい粒を手に取った
光にかざすとキラキラと反射している
不思議そうに眺めているシンを見て、ヒトラーは満足そうに頷いた
「……どうだ?実に興味深いだろう」
ヒトラーはシンの手から透明な粒を取ると、部屋のどこかへ投げ棄ててしまった
「今のは、一体何です?」
「ただの水晶(ガラス玉)だよ。」
ヒトラーは苛ついた様子で応えた
その苛立ちはシンに向けてのものではなく、少女へのものだ
―――で、結局、俺に何を求める?
シンは無言で次の言葉を待った
暫くして、ヒトラーが口を開いた
「君も今見たように、"これ"の涙は宝石となる。……深紅のルビーにも、深青のサファイアにもなると言う……。これも錬金術の一種だと私は考える。」
―――胡散臭ぇ話だな。
「生憎、俺の知る錬金術では無い…です。」
「承知の上だ。その上で、君に頼まれて欲しい。」
「分かりました。で、何を?」
「"これ"の利用価値を見出だすのだ。………金にならないと分かった場合は即刻燃料にでもしてやる。」
ヒトラーはそう言い残すと、足早に部屋から出ていった
余程、ユダヤ人と同じ空気を吸いたくなかったのだろう
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