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少女はポロポロと涙を溢した
"えっ!?"
マルクは目の前の信じられない光景に目を疑う
少女の瞳から透明な小石が溢れ落ちているのだから当然である
「……ふ、副社長―――」
「てめえ…」
シンはリンレイの襟首を掴み壁に押し付けた
ヒトラーからの命令は超が付く程の極秘事項である
当然の事ながら、民間人が知るなんて有り得ないのだ
完全なる失態だ
目撃者がいてはならない
目撃者は、
―――消さなければならない…
「…何泣いてやがる?」
低い静かな声だ
聞くもの全てに恐怖を与える
ピキン…
シンは床に散らばったガラス玉を踏みにじり、更に強く壁に押し付ける
シンは苛立っていた
極秘事項が漏れたからではない
それは最初に少女と出会った時から感じていた違和感
あの時には漠然としていた、同じ『人間』として認められない'何か'
それがようやく分かったのだ
「そうやってただ泣くのは止めろ…。てめえは泣けば俺らが喜ぶとでも思ったのか?…馬鹿馬鹿しい」
シンはリンレイの瞳を直視する
「こんなガラス玉で俺が喜ぶと思ってんのか、ああ!?てめえは自分で自分の『涙の価値』を下げてるって分かんねぇのか!?」
シンは声を荒げた
ビクッ
リンレイの身体が強張った
シンは腕の力を抜く
するとリンレイは膝から床に崩れ落ちてしまった
シンはリンレイを見下す形で、上から言葉を浴びせる
「俺はてめえの泣き顔は屁吐が出る程嫌いだ。……だからぴぃぴぃ泣くんじゃねぇ。てめえはもっと自分のプライドを持て、良いな。」
シンは横を向き、マルクの胸ぐらを掴んだ
「マルク、お前は今、何も見てない……よな?」
有無を言わせないシンの圧力に、マルクはただ頷く事しか出来なかった
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