第1話 先生?

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9月後半のある日 私は昼寝をしていた。 少し肌寒い風と、少し暑い日差しがたまらなく気持ちいい。 「ちひろー、今日移動教室だよー?早く起きなよ!」 そうやって私をゆすぶってきたのは、同じクラスの新留 咲だった。 「あ、移動教室なんてあったのかって顔してるね?今日から家庭科の授業じゃなくて、技術の授業が始まるんだよー!」 にこにこと陽気に話す彼女は 本当に可愛らしくて、寝起きの気分の悪さも何処かへ吹き飛ぶくらいだった。 咲とは小学生以来からの親友で、唯一信頼できる女子だ。 「技術って何やるんだろうねー? パソコンとかもやるらしいよー! 私、パソコンは得意なんだー! ちひろもパソコンは得意だよね?」 首を傾げる咲に頷きを返す。 「でも、今日はパソコン室じゃなくて、技術室だからなぁ… 早くパソコンやりたいなー。」 しょんぼりとするその姿は 餌をもらえなかった仔犬のように小さく思えた。 別館にある技術室は、他の教室と少し作りが違って、ドアはとても頑丈な重い、押し引きするタイプの扉だった。 中は教室2個分くらいの広さで、奥には木などを切る作業をする機械などが置いてある。 「…変な雰囲気の教室だねー…」 中に入ると黒板の前には 背の高い、地味な顔をした先生が立っていた。 「…なんか、先生って感じしないね。」 確かに。 一応先生らしくジャージを着てるけれど… ボサボサの髪に木くずだらけの ジャージ。 「…あの先生、だっさ。」 いつもは優しい咲が めずらしく顔を引きつらせている。 私はというと、そんなに顔を引きつらせる程、先生のイメージは悪いものではなかった。
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