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「……ついでだから言うけど。水沢はな、俺みたいなノロマで意気地なしの男に練習させてくれるんだよ。母性本能が疼くんだって」
「練習って、何のよ」
頭の中がグルグルして、声が震える。
寒気がしたのは、エアコンが効いてるせいじゃない。
「あいつは、ヤリマンじゃなくてドーテー食い。変わった女だけど、少なくとも俺には、いいやつだよ。こうしてお前とまた会って話せるなんて……叶うと思わなかった」
「何それ、ドーテー食い? 誘われて、ヒデオ、ヤッたわけ? ばっかみたい」
悪態をついたって、あたしがヒデオを切った過去は変わらない。
あたしが出来なかったことを、水沢エリがヒデオにしたってことも、なかったことにはならない。
だけど焼け付く胸は、嫉妬でいっぱい。
簡単な欲望とすり替えてなかったことにした筈の恋が、今になってあたしを苛む。
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