4.誤解

13/19
前へ
/34ページ
次へ
  「……ついでだから言うけど。水沢はな、俺みたいなノロマで意気地なしの男に練習させてくれるんだよ。母性本能が疼くんだって」 「練習って、何のよ」  頭の中がグルグルして、声が震える。  寒気がしたのは、エアコンが効いてるせいじゃない。 「あいつは、ヤリマンじゃなくてドーテー食い。変わった女だけど、少なくとも俺には、いいやつだよ。こうしてお前とまた会って話せるなんて……叶うと思わなかった」 「何それ、ドーテー食い? 誘われて、ヒデオ、ヤッたわけ? ばっかみたい」  悪態をついたって、あたしがヒデオを切った過去は変わらない。  あたしが出来なかったことを、水沢エリがヒデオにしたってことも、なかったことにはならない。  だけど焼け付く胸は、嫉妬でいっぱい。  簡単な欲望とすり替えてなかったことにした筈の恋が、今になってあたしを苛む。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加