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今、坂田ヒトシを特別に意識してるかどうかって訊かれたら、答えは微妙なんだけど。
前は、少なくともカレシ──ちょっと特別な人、だった。
そんなことヒデオに言ったら、また不機嫌になっちゃうんだろうな。
「サナさんはお元気ですか?」
「ん? ああ、サナ? 元気だよ。相変わらず、額田とラブラブ」
「ご両親に認めてもらったんでしたっけ」
「うん。サナは額田の籍には入ってなかったみたいで、他人だからって」
あたしがそう言うと、穏やかに微笑んでいた坂田ヒトシの顔が急に歪んだ。
「……あ、なんか急に胸が痛く……」
坂田ヒトシはそのまま俯き、胸のあたりを押さえてヨロヨロとガードレールにもたれる。
「ど、どうしたの?」
慌てて駆け寄ると、坂田ヒトシの苦しそうな顔がそこにあった。
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