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身体を支えてあげればいいのか、背中をさすってあげればいいのかよく判らなくてオロオロしていると、坂田ヒトシは眉間に皺を寄せたまま、クスリと笑う。
「失恋の、古傷ですよ。1年前、サナさんのその話聞いたあと、別れようって言われたなぁって」
「……なっ」
何ともない様子で背筋を伸ばすと、坂田ヒトシは微笑んだ。
彼の肩に触れたまま、引っ込みのつかない手。
坂田ヒトシはその手を取ると、じっとあたしを見つめる。
「マナミさん」
「え?」
「今、幸せですか?」
ふざけた様子のない、坂田ヒトシの穏やかな瞳。
真っすぐな男の子だとは知っていたけど、坂田ヒトシのこんな真摯な瞳は初めてで、驚いた。
坂田ヒトシがあたしに未練を残していることは、訊かなくてもその瞳で判ったんだけど。
あたしは、微笑んで答える。
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