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あからさまに嫌そうな顔をしたあたしの頬を、サナは左右から摘んで引っ張った。
「いたた、やめて」
「何たら説を信じる信じないの前に、今ヒデオくんに夢中なマナミも、どうなるか判んないよってこと」
「そんなこと」
引っ張る力を込めたサナの両手から何とか逃れ、あたしはジンジンする頬を撫で摩る。
サナは空いた両手を持て余しながら、悪戯っぽくあたしを見た。
「だって、かっこよく成長したヒトシくんと偶然出会ったってだけで、選択の可能性ってぐっと広がってるんだよ。マナミにそのへんを選ぶ気があろうとなかろうと」
「可能性って何よ! 変なこと言わないで」
「だから、可能性の話だって。あたしだって突然他の人と恋に落ちるかも知れないし、マー兄がそんな恋をしてあたしが捨てられるかもだし」
「なんでそんなに達観してるの」
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