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「達観なんてしてないよ。でも運命の悪戯とか皮肉については、マナミの方がよく知ってると思うんだけど」
茶化している様子のないサナに、思わず言葉が詰まった。
それは多分、リュータローのことを指してるわけで。
もちろん、ヒデオとのことも。
そう、一瞬前までは考えられなかったことを、あたしは何度か経験してる。
肝心なことが頭から抜け落ちてただなんて、色ボケしすぎだろう。
言い返せなくなったあたしを見ながら、サナはため息をついた。
「あたしが言いたいのはね」
サナは足を投げ出してその場に座り、天井を仰ぐ。
「ヒトシくんに抱きしめられて、少なからず動揺したわけでしょ。あたしに話さずにいられない程度には」
「……うん」
「今夜も、ヒデオくんいないんでしょ? 今日はそこんとこにマナミ自身のどっかに隙があって、ヒトシくんに衝かれたかたちになったけど。マナミ自身の問題だよ」
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