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「昨夜の喧嘩の原因、削除したから。見て」
受け取りながら、ヒデオは眉根を寄せる。
「何で俺が確認しなきゃなんないの?」
「あたしが、そうして欲しいんだもん」
「消したら消したでいいじゃん。何でわざわざ蒸し返すんだよ」
携帯をサイドテーブルにそっと置くと、ヒデオは一気にビールをあおった。
「お前、ちっとも判ってない」
苦笑したヒデオは、まだ雫の滴る髪を後ろに流すと、ベッドに腰を下ろす。
「大人げない嫉妬だ、って怒られるの覚悟だった。けどお前、謝るし」
「だって、それは……」
「判ってる。お前の謝罪は『怒らせるようなことしてごめんなさい』だろ。判ってんだよ、俺だって」
コクンと頷くと、ヒデオは少し疲れた瞳をあたしに向けた。
「判ってても、『そいつとまだ何かあるからごめんなさい』に聞こえるんだよ。男の耳には」
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