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「何かなんて……」
「そりゃ、ないにこしたことはないけど。マナミから連絡あったときは、助けてやるから。俺に新しい女ができてたとしても、な」
リュータローは時計を見、あたしに視線を流すとニッ、と悪戯っぽく微笑む。
その瞳に色づいた陰を感じて、あたしは口を尖らせた。
「バーカ。やらしいこと考えてんでしょ」
「はは。ま、マナミは特別だから。別れても切れても他の女に惚れても、俺、たぶんマナミのことはずっと好きだし」
「はあ!?」
「ま、この世にそういう男がひとりはいるって思っときゃ、耐えられることもあるかも知れないし、って思ってさ。今日はそれを言いに来たんだよ」
ふわりと緩んだリュータローの瞳は、いつかあたしを本気で好きだった、と告白したときの瞳と同じ色をしていた。
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