7.奈落

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  「彼と、付き合ってるんですね」  背中からあたしをいたわる為だけに発せられた声がした。  振り返ることもできずにいると、大きな手があたしの目元を覆い、そのまま声の主の胸に抱き取られるのが判った。 「判っていたら、もう少し早くこうして隠してあげられたのに」  真っ暗な視界。  焼け付くように熱い目から、とめどなく涙が流れていくのが自分でも判った。 「……泣かないで、マナミさん」  耳元で響く声は、あたしが望めば簡単に手に入るような、どうしようもなく甘やかした声だった。  どうして彼がここにいるのか、とか。  そんな瑣末なことはどうだってよかった。 .
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