233人が本棚に入れています
本棚に追加
こういうのを幸せって呼ぶんだ、ってこと、あたしはもうよく知っている。
こんなにあたしを変えてしまったなんて、ヒデオ凄すぎるよ。
どんな人混みの中にいたって、ヒデオならひと目で絶対に判る。
そんな確信を持てる自分が今、とても好きだった。
──なのに。
足を止めて、あたしはその場に立ち止まった。
息が切れて肩が上下するせいで、視界が揺れる。
そのせいで見間違えただけなら、どんなによかっただろう。
のろのろと携帯を出して時間を確認すると、まだ3時半。
ヒデオが「夕方」と呼ぶ時間って、だいたい5時を過ぎてからのことだ。
夕方には、まだ時間があるっていうのに。
いつも乗せてもらってる白のワゴンを、見間違えたりしない。
15メートル程先に停まっているあの車は、ヒデオの仕事用の車だ。
.
最初のコメントを投稿しよう!