7.奈落

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   こういうのを幸せって呼ぶんだ、ってこと、あたしはもうよく知っている。  こんなにあたしを変えてしまったなんて、ヒデオ凄すぎるよ。  どんな人混みの中にいたって、ヒデオならひと目で絶対に判る。  そんな確信を持てる自分が今、とても好きだった。  ──なのに。  足を止めて、あたしはその場に立ち止まった。  息が切れて肩が上下するせいで、視界が揺れる。  そのせいで見間違えただけなら、どんなによかっただろう。  のろのろと携帯を出して時間を確認すると、まだ3時半。  ヒデオが「夕方」と呼ぶ時間って、だいたい5時を過ぎてからのことだ。  夕方には、まだ時間があるっていうのに。  いつも乗せてもらってる白のワゴンを、見間違えたりしない。  15メートル程先に停まっているあの車は、ヒデオの仕事用の車だ。 .
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