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あれって、中学の修学旅行のことだったよね。
あたしがそう訊くと、ヒデオは煙草をくわえたまま、目を細めるようにして微笑んだ。
『ごめん。ごめんねヒデオ……』
どうして忘れてしまっていたのか、あのときあたしの心の中は、ヒデオでいっぱいだった。
全員部屋に引き上げてしまって誰もいない旅館のロビー、あたしはぽろぽろと涙を零していた。
ヒデオは荷物を抱えながら、困った顔であたしを見下ろしている。
修学旅行中、映画村の観光を終えたあたし達のグループ(あたしとヒデオと、内藤くんという同級生)は、京都タワーの名店街をうろうろしていた。
自分の買い物ばかりしていたあたしと内藤くんに、ヒデオが「おまえら、家族に何か買えよ」って言ってくれて、おみやげを買うことになって。
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