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やっぱりあたしのこと怒ってるんだ、そう思ったとき、ヒデオは口を開いた。
『女に何かあったら、
助けるのは男の役目なんだよ。
だから、翠川は気にすんな』
一気にそう言い切って、ヒデオはぷいっと顔をそらしてしまう。
キョトンと見上げるあたしの荷物を傷めてるはずの手で抱えて、ヒデオはあたしに背を向けて歩き出した。
『ま、待ってよ、自分で持つよ』
『うるさい。黙って頼れ』
頬を汚していた涙を拭い、あたしはあわててヒデオのあとを追う。
『頼れって、ヒデオ怪我してるのに』
『おまえ、しつこいよ。平気だって言ってんだろ』
『平気じゃないでしょ!?』
食い下がるあたしの前で、ヒデオはいきなり立ち止まった。
小走りで追っていたあたしは、勢いよくその背にぶつかってしまった。
けど、びくともしない広い背に、小さく驚いたのを覚えている。
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