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女の子は、普段男の子を異性だって意識することはない。
意識したときは、その人が少なからず特別だってことなのに。
そのときのあたしは幼すぎて、ヒデオを心配する気持ちごと、彼の特別さに気付かなかったんだ。
気付くには、いつものヒデオが優しすぎたのかもしれなかったけれど──。
今の彼は、どう無視しようとしたって出来やしないほど、あたしを惹きつけてやまない。
何度も抱かれたその腕に、顔を寄せて腕を絡ませた。
がっちりとしたこの腕に触れるたび、離れられないということを知る。
あのとき、あたしが今みたいに自分の衝動のままに動くことができたなら。
あるいは、ヒデオが今みたいに強い気持ちを持つことができたなら。
今の二人がそろって焦がれる「初めて同士」になれたのかも知れなかった。
だけど、違う人を知っているからこそお互いの本当のよさがよく判るのもまた、事実で。
後悔のしどころが、結局判らない。
肩に唇を寄せて、軽くキスをしてやると、ようやくヒデオがあたしの方を見た。
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