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ヒトシくんの「好きな女への観察眼」は想像よりずっと鋭くて、あたしはいつも見透かされるばかりなのだった。
それが判っているからいつもはなるべく会わないように心がけてるのに、今日みたいに急に、というのがあるから困ってしまう。
「あの、ヒトシくん……あたし、あんまりヒトシくんとは……」
「判って言ってるんですけどね」
ヒトシくんは少し面倒そうに溜め息をつくと、足を一歩こっちに向かって踏み出す。
あっ、と思った瞬間、彼の顔がすぐ傍まで迫っていた。
「それに、あなた、俺に逆らえるとでも?」
耳元で低く囁かれて、あたしはビクリ、と身体を震わせる。
クスリ、と笑うと、ヒトシくんはあたしを悠然と見下ろした。
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