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学校帰りそのままのヒトシくんは、ブレザーを脱いでパーカーを羽織っているから、特に見咎められるような格好じゃない。
何かと場所を取るアーケードゲームばかりが置かれたゲームセンターは爆音だらけで、すぐ上のパチンコ屋に負けていない。
UFOキャッチャーやプリクラは見当たらないから、本当にゲーセン、って感じで女の子だけの客には敷居が高い気がする。
ヒデオはこういうところにはあまり来たがらないから、ちょっと新鮮だった。
「でも、俺も久しぶりですよ。こういうとこ」
溜め息をつきながら、ヒトシくんはこっちへやって来た。
隅に置かれた休憩用の椅子に並んで腰かける。
ヒトシくんとは、こうして付かず離れず、といった関係が続いている。
言葉がきつい時もあるけど、ヒトシくんはきちんとわきまえた振る舞いをしてくれる。
春に学校で別れてからは、必要以上にあたしに触れない。
だから油断しているというわけではないけど。
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